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昔の家には、その土地らしさがありました。風景に溶け込み、人々の暮らしになじむ家々は、近くの山の木、近くの川の石、近くの土で焼いた瓦でつくられたものも多かったように思います。気候風土が同じ土地で育まれた素材で家を建てることは、自然環境に合った住まいをつくるという意味でも理にかなっていました。
いつからか遠い国から材料を運んでくるようになりました。この土地に豊かな森林資源があるのに、煙を上げて石油を燃やしながら木材が海を越えて運ばれてきます。
一昔前までは、おじいちゃんが孫のために山に木を植えて、孫はその木で家を建て、また次の世代のために木を植えるという習わしがありました。木を伐採したら植林し、木を育てるという循環がつながっていたのです。それは未来のためでもあり、また、山の保全をして土砂から里を守るという意味もありました。
近くの山の木で家をつくれば、きっと百年後にも同じ材料で修理ができ、ずっと住み継いでいけるはずです。そんな未来を守るためにも、近くの山の木を大切に使って、土地になじむ家をつくり続けていきたいと思います。