中心街でも“木と緑の暮らし”
世代を渡る「いずれは孫が住む家」をつくる

中心街でも“木と緑の暮らし”
世代を渡る「いずれは孫が住む家」をつくる

2軒目に訪ねたのは、鹿児島市の中心部「天文館」エリアに建つ立山さん宅。少し暑さを感じるようになった初夏の朝に、伺いました。

鹿児島の中心街に建つ木の家

鹿児島で一番の繁華街・天文館に歩いて数分の立地。思えば、天文館周辺を移動するとき、周囲とは異なる印象の建物を目にしたことがあった。 今回の訪問で、「シンケンの家だったのか!」と納得。
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こちらが、今回の訪問先、立山さんのご自宅。
畜産の農業技術関連のお仕事を定年退職され、畑作業に精を出すご主人と、
保育園で子供たちと共に過ごすお仕事をされ、我が家で過ごす時間を愛する奥さま、
お二人の住まい。

あらためて観てみると・・・この一等地に一軒家というのは、とってもぜいたくな土地の使い方にも思える。 ここにこの“木の家”が建っているのには、どんな背景があるのだろう。
外観

先代から受け継いだ土地を
孫の代まで 大切に使ってもらうために

“住まい手”の立山さん(奥さま)に、この家がどんな風に形になっていったのか、伺った。
外の光で自然な明るさの部屋が、私はとても好きだ。
内観

「もともとは、この場所に住みたいとは思ってなかったんです」と立山さん。

ここは、ご主人のお父さまが“お米屋さん”をされていた場所で、お店をたたんでそのままになっていたそうだ。

家族の中で「壊してしまって、ここがなくなってしまうのは寂しい」「長年住んだこの場所に帰れるようにしてほしい」など長く話し合いを重ね、 「商売にはいいけど、住むには都会すぎるんじゃないか」という心配も持ちながら、家を建てる方向に踏み出すことになった。

立山さん
シンケンの家は前から気になっていました。バスに乗っているときに見て気になっていた“シンケンらしき家”をこっそり見させてもらったり(笑) 姶良の友人のおうちがシンケンで、訪ねて入った瞬間、『いいね!』と思いました。

私がとても気に入って主人に相談したら、他は見ないで『それならシンケンで建てよう』と任せてくれました。

先代から受け継いだ土地を、住みたくなる素敵な住まいとして、ゆくゆくは孫たちに引き継いでいきたい。そういった背景が、この場所に木の家を生んだんだ。

立山さん
夫は、プランづくりにあまり興味がなくて、“口は出さずに金は出す”という感じでしたが(笑)、娘とはたくさん話しました。

この家は、私たちが住んで終わりではなくて、子供たちや孫たちに引き継いでいく家でもあるから。

今はとっても気に入っているこの家も、いつかは譲ることになる。家を大事にしてくれる人に譲りたい。大事に手入れして。愛されるように。

小屋裏部屋
長く生きる木の家、そして、自然を好む“人の普遍的な感覚”に合った木の家だからこそ、自分たちのあとに住まう人の暮らしにも思いが巡る。 このことは、とっても大切な感じがする。

“街なか”に住むイメージが
湧かなかったけれど

立山さん
街なかだし、落ち着かないのかな、騒々しいのかなと思っていました。

実際に住んでみて、どんなことを感じているのだろう。

立山さん
ここに来て4年目。住んでわかったのは、想像もしていなかった住みやすさ。となりの建物も、近いのに気にならないんです。

バルコニー
確かに、外を通れば「繁華街に近い大きな道路」で、両側に建物がたくさん並んでいるのだけど、家の中にいるとそのことは感じない。
窓
大きな窓と吹きぬけ、見上げる天窓が開放感を呼び起こすし、窓はどこから見ても樹々が目に入る。 となりの建物がある側を壁にしているから、圧迫感もない。

そうか、“2階リビング”だから、道路の車も人も見えないんだ。近く・遠くの街路樹が自然と目に入って奥行きも感じられる。 一番長い時間を過ごすリビングの居心地がよくなるように、2階なんだ。

なんともよくできている! とまた感心。

立山さん
長くマンションに住んでいたけど、ここでは食事の準備も、いい時間なんです。以前は壁に向かって料理していた感じ。 ベランダまで行かないと遠くが見えなかったし。

キッチン
朝の光が、近隣の建物の間をぬけ、キッチンへ

立山さん
マンションでは部屋がひとつひとつ区切られていて、日中も照明をつけてましたね。コンクリートの息苦しさも感じていて。
この家は区切りが少なくて、開放的に感じます。今の家は、呼吸がしやすいな。

ここにいると、風の存在を感じる。空気の流れが涼しいし、街路樹の枝葉や部屋の植物が揺れていて、視覚的にも風を感じて気持ちいい。夏でも風が通るそうだ。

立山さん
季節の中では、特に冬に快適さを感じます。外から帰ってきて“ほっ”とあったかい。結露もしないし、家のどこでも、あったかいんです。

“冬の過ごしやすさ”は、以前のお宅でも伺ったこと。また冬にも来てみたいな。

“塀の高さ”の決まり方

このとき、シンケンの広報・森畑さんが話してくれたのが“塀の高さ”のこと。
窓
塀の高さは“近隣の方との視線の重なり”と“部屋に入る陽の光”に影響する

シンケン・森畑さん
ベランダ側の隣家は、昔は理容室だった建物で、今は使われていません。お孫さんの代までを見据え、“となりが建て替わる”ことを前提に考えています。

そこにマンションが建つとして、その高さはどれくらいか、こちら側に窓が向くか、人の通りがあるか、そのとき視線の重なりはどう起こるか。

考えられることを想定した上でこの塀をつくり、出来上がった状態から『板一枚分、足すとどうなる? 引くとどうなる?』 を実際に試し、この空間を感じてみて、高さを決めました。

おぉ。未来のこと、そのいくつもの可能性までも考えられているのか。
居心地のよさに関わるたくさんの要素を、それぞれを本当に“絶妙なバランス”で、家全体で調和させていく。

この空間の居心地のよさは、そうして生まれているんだ。

“私たちの住まい”が
“孫たち・友人たちが集う場所”に

家族団らん
その後も立山さんのお話を伺う中で、この家の大きなギフトは「我が家が、親しい人たちが集う場所になった」ことだと感じるようになった。

立山さん
この家になってから、孫たちが来やすくなって。『ご飯食べるよ』と呼びかけると、マンションのときはあんまり来なかったけど、 今は来るようになりました。おいしいものを食べて、好きなことをして過ごしてますね。

天文館に出かけるときに『車停めさせてね』と言って寄っていったり。前は、誕生日とかイベントのときくらいだったけど、今は土日もしょっちゅう孫が来ます。

マンションのときは、近隣に響く音を気にかけて、夜の7時以降は『静かにね』と言っていたけど、今はいつでも走り回れるのがいいですね。

家族の交流が増えて、“近くなった”感じ。
家自体の心地よさ、子供たちがずっと楽しめる“空間の遊び”、そしてこの立地。
“街なかであること”がもたらしてくれた、素敵な副産物だ。
家族
取材日:2019/5/21


取材を終えて

3時間半ほどの時間を共にさせていただいて外に出ると、ほっとする、やさしい、守られた空間にいたことに気づきました。外の世界に、ちょっと不安を覚えるくらいに。そんな空間だから、“また来たくなる”のは自然なことなのかもしれません。

 

家が、別々に住む家族の接点を増やす。
住まいが、人が自然に持っている“心地よさの感覚”を包む器であることで、それが起きやすくなるように感じ、住まいが持つ可能性にまた出会う時間でした。

・場所:鹿児島市新町
・敷地:129㎡(39坪) 1階:53㎡(16坪)2階:43㎡(13坪)
・完成:2016年3月

”私”が知った
シンケンの住まいづくりメモ

"防火地域"でも「木の家」を建てられる技術

近隣の家が間近にあって防火地域に指定されている場合、木の家は消防法の基準をクリアする必要がある。
構造や外壁が木でできていながら、内壁に自然素材で吸湿性能がよく“その上燃えにくい”壁材を使用し、“基準を満たす設計”を完成させる技術があることで、この住まいを建てることができた。

立山さんが心惹かれた“木の家”をこの場所に建てるには、実は消防法の基準をクリアすることが課題になるらしいのだけど、シンケンは独自技術で国土交通省の認可を取っているから建てられるのだそうだ。

空気をうまく扱って、家の空間を広く使う

空気はあたたまると上昇する性質があるため、暑い季節には、屋根裏など高い場所に熱がこもりやすい。
空気の流れのシステムによって熱をこもらせないことで、家の中を余す所なく、広く使うことができている。

シンケンが木を使う理由

“新建材”(プラスチックなどを使った、太陽や雨といった自然の作用で外見が変化しづらいもの)は、製造元のモデルが変われば、建てたときと別の製品を選ぶしかなくなってしまう。

木でできているなら、日本にいれば、木材はいつまでも調達し続けることができる。家を解体する日が来ても、自然に還る材料でできている家は、自然にやさしい。
writer

取材している"私"について

はじめまして。鹿児島県 霧島市の海の目の前、友人たちと改修した古民家に、妻と5歳の息子と暮らしています。フリーランスになって約10年、ライターなどいくつかのお仕事をさせてもらっています。

何度かアメリカのカリフォルニアを訪ね、自然との共生や進んだ文化に惹かれています。食材はできるだけ無添加・無農薬を選ぶ傾向があり、目の前の海に癒やされながら仕事に没頭しています。

知人の紹介で「シンケンの住まいづくりを言葉で表してほしい」という依頼をいただいたのがシンケンとの出会いです。家についてほとんど知らない自分でいいのだろうか? と思いながら、広報の森畑さんにいざなわれ、シンケンの家と、住まい手さんの夢に出会っていくことになりました。

このページを見てくださっているみなさまと一緒に、シンケンの住まいづくりを知っていきたいと思います。