- HOME
- > 理想の暮らしを探す旅
- > 山並みを取り込んだ…
山並みを取り込んだ“大開放感”
二世帯みんなが心地よい「暮らしやすさ」が進化する家
山並みを取り込んだ“大開放感”
二世帯みんなが心地よい「暮らしやすさ」が進化する家
初めて訪ねたのは、姶良市蒲生町にあるシンケン・社員大工リーダーの垣本さんご自宅。春の日に、川辺の爽やかな風が吹くお家に伺いました。
もくじ
ご自宅の特徴
家の前に着くと、小学2年生の息子さんが「ようこそ!」と声をかけてくれた。「どうぞ〜」と玄関から招き入れてくれる。なんとも心地よいオープンさを感じた。
垣本さんのご自宅は、崇志(たかし)さん・ひとみさんご夫婦と先ほどの遥叶(はると)くん、そしてひとみさんのご両親の二世帯住宅で、5人で暮らしている。それと犬のチョコちゃんも。
2013年に土地探しを始め、ご主人の崇志さんが棟梁 兼 現場監督を行い2017年11月に完成、加治木からこの蒲生の家へやってきた。
まずは住まいのご案内をとお願いすると、遥叶くんが「こっち!」と先を行ってくれる。この家を好きなことが伝わってくる姿だ。
垣本さんの住まいの特徴は、まず、大開放感の窓と、すぐ外に広がる川も含めた“我が家の景色”。
私が知っている窓の大きさをゆうに超え、そのフレームに切り取られる景色は、屋内なのに自然の中にいるように感じさせる。ここが垣本家のリビングだ。
奥さま・ひとみさんが家事の時間を過ごすキッチンは、傾斜地の高さが活きて空中に浮いているような気持ちよさ。
リビングからつながる廊下の先にはご両親のお部屋がある。
ご両親のお部屋。実際の大きさ以上の広さを感じさせる窓の存在に、また驚いた。照明をつけなくても、窓から入る光で十分に明るい。
太陽の光と、木や畳、自然に還る壁材といった自然由来のものとが織りなす風合いが、この部屋の落ち着きを深めてくれている。
続いて2階へ。ここは「屋根裏」という扱いになるそう。家のことを知っていくと、綿々と続いてきた“家造り”という文化が垣間見えるのがおもしろい。
そこには、寝室と、遥叶くんの“みんなのひみつきち”。これは・・・子供にはたまらない空間だろうな。「ここに入ってもいいよ!」と、ひみつきちに案内してもらった。ひみつなのに、ありがとうね。
こちらも彼のお気に入り、ボルダリング。ひとつの空間にいくつもの活かし方があるのが素敵だ。
個人的に最もぐっときたのがこの場所。絵画のように景色を切り取る窓辺。ソファに腰を下ろして本を読んだり思索にふける・・・まさに特等席。
ちなみに、崇志さんも気に入ってはいるものの、家を進化させたり、息子さんの工作のリクエストに応えるために作業をすることも多く、なかなかゆっくり座る時間はないとのこと・・・
リビングの大窓から続くウッドデッキもとても印象的。広さはもちろんのこと、“外”とゆるやかに、自然につながっている感覚も新鮮だ。
垣本さん宅は、川岸の傾斜地に建っている。土地を見つけたときは「藪になった崖」だった。しかし、崇志さんにとっては「こんな土地を探してた!」という出会いだったそう。
“山並みを望む、近隣も電線も視界に入らない傾斜地”を探していたのだ。そうして、川辺に浮かぶような住まいが生まれたのだった。
思い描いたのは
「自然と心地よく暮らせる」住まい
あらためて、この家がどんな風に形になっていったのか伺った。インタビューの空間も心地いい。
ご主人の崇志さんは工業高校で建築を学び、就職先を探してまわるうちに「ビルを建てるより家をつくる方が好きだな」という想いが強くなり、シンケンに。
シンケンの“住まいづくり哲学”の中、大工として携わるなかで、「この窓・・・いいな」と自分でも素敵さを感じる日々を経て、自分と家族の住まいをつくるところへ。
どんな家にしたいと話して、この形になっていったのだろう。
「私はほとんど何も言わず、主人に任せていました」と奥さまのひとみさん。正確には、ご主人と、シンケンという会社に、任せていたという。
ひとみさん
自分が何か言うよりも、“住まいづくりをとことん突き詰める専門家集団”が、私たちが住まう未来を目に浮かぶほどイメージして、一歩も二歩も踏み込んだ提案をしてくれる。
日頃のご主人の姿を通して、そんな風に感じていたそうだ。
「“家づくりは、3軒建ててやっとわかる”という言葉があるんです」と崇志さん。
崇志さん
ふつう家を建てるのは一生に一度だし、奥深い家づくりを、施主側だけで突き詰めることは難しいですよね。だから、エキスパートとして、住まい手さんにちゃんと意見を伝えることを大事にしているんです。
なるほど、考えてみれば『どんな家にしよう?』と思い描くこと自体、たっくさんの要素をはっきりさせていく必要があるな。
『家の雰囲気はこんな感じで、窓はこんなで、それで玄関は・・・』といろんな夢があっても、それらがうまく調和するには“住まい全体の空間をデザインする”視点が必要なんだ。
「そして、“土地によって、家が決まる”んです」と崇志さんが続ける。そう、よく考えたら、どんな土地に建てるかで家が変わるのは自然なことだ。
まちの中に“四角い建物”が多い感じがするのは、土地が四角く区分されているからなのか。
“土地が家を決める”からこそ、時間をかけて土地を探し、この場所と出会った。
崇志さん
最初は本当に“藪になった崖”で(笑) でも、自分のイメージにぴったりでした。そうして、この土地を選んだから、この家の形になったんです。
土地から構想した家が、自分も建築に入ってこうして完成した。それはやっぱり嬉しいことですね。
崇志さんが思い描いていたのは、「何気なく、自然と心地よく暮らせる」住まい。
崇志さん
ものに“落ち着く場所”があれば、部屋はきれいになるんです。妻の過ごしやすさのため、そして家庭円満のためにも(笑)、『片付けて』と言わずに自然と片付けてくれるように。
それは、家の造りや家具や建具のちょっとした位置で変わる。そこが、大工として腕の見せどころだし、楽しいところです。
そして、家を建てるときに完璧にしようとするのではなく、「住まいながら、自由に変化させていこう」とも思っていたそう。
崇志さん
暮らしてみて、『あ、このハンガー掛けは妻の身長に合わせてもう少し低い方がいいな』なんて気づくものなんです。妻の『ここさ、なんか・・・』といった、“言葉にはできないんだけどなにか不便さに似た感覚”を受け取り、『こうしたら解決できるな』と考えるのが楽しい。“気づかないんだけど解決してる状態”をつくるのが好きですね(笑)
家が完成した後も、暮らしに合わせて進化させ続ける楽しさがあるのを感じた。
もちろん崇志さんが大工さんだからできていることもあると思うけれど、シンケンの家は柱など“構造を支える木材”が触れられる場所にあるため、後からのカスタマイズ性が高い。シンプルなつくりだから、配置替えもしやすいみたいだ。
二世帯住宅
“ちょうどいい距離感”が
つながりと安心をつくっている
その「自然と心地よく暮らせる」デザインは、ご両親との二世帯住宅の設計の中にも生きている。
崇志さん
そこに存在は感じるけど、プライバシーは大切にできている“ちょうどいい距離”を意識しました。それが上手くはたらいていて、扉もあるけど閉めたことはないですね。
二世帯住宅は、関係をうまく保つのが難しそうなイメージがあったけど、『ちょうどいい距離感』が“家族のつながり”と“それぞれの安心スペース”の両方を生んでいることに驚いた。
お父さん・お母さんに“お気に入りの場所”を尋ねると、やはりご自分たちのお部屋だそう。
お父さん
とても落ち着くし、自分たちで手入れしている花も見れる。ここでゆっくりできるのがいいですね。
お母さん
朝起きて、『あぁ、いいな』って思います。家の中も、外の景色も、天気や一日の時間帯で色合いを変えて。毎日、いいなぁと思う。おっきな親孝行を受けている感じがしますね。
伺いながら、静かに感激した。家の可能性って大きい。
お母さん
年をとってるから、真夏でも涼しく、冬もあたたかいこの家は本当にいいんです。
外がむわっと暑くても、中に入ると涼やかな空気。梅雨もじめっとすることがなくて快適。
外がすっごく寒くても、玄関を開けたらあたたかい。冬なのに、靴下を履かなくてもいいくらいなんです。
お二人は嬉しそう。
崇志さん
息子にとっては、僕たちに叱られたとき、じぃじばぁばがいる別の空間は拠り所になってると思います。あと、僕が苦手な庭の手入れをお願いできていて本当にありがたい!
主にお父さんが世話をされている庭は花々がきれいで、明るい感じを住まいの内・外に届けてくれていた。
自分の両親とこんな風に暮らしていくことを想像すると、とても素敵な気持ちになる。
この家に住まって変わったことは?
家をつくり、住まうようになって、家族にはたくさんの変化があったはず。特に印象的なことを尋ねてみた。
ひとみさん
息子が外のことを言うようになったんです。空の色。鳥の姿。星。天窓の下に寝転がって流星群も眺めました。外を見ることが増えたな。
友人と一緒にやってきたお子さんが『緑が見えるっていいね』って言ってて。子供でもそう感じるんだと思いました。
「前の家に住んでいたときは、休日はショッピングモールや行楽地に行くことが多かったよね。出かけないと『休みの日なのに何もしなかった』みたいな、もったいない感じがして。
今は、息子が出かけたいと言わなくなったし、家にいても、いい休みになってる感じがします。
お昼ごはんを、窓を開けてウッドデッキで食べるだけで、満たされた時間になります。
家にいる時間は長くなったけど、『みんなで一緒に団らんしよう』というわけでもなく、みんな好きに過ごしてますね。同じ場所にいなくても、つながってる感じがして。居心地がいいんです。
無理してしゃべらなくてもいい。家のつくり、雰囲気が、言葉がなくともつながりを感じられる空間をつくってくれていると思います。
崇志さん
“自然とつながる”ことって、ふつうは少ないと思うんです。ここだと、自然となじんで、生活させてもらってる。力まずに。それが、みんなにとって当たり前になっているのが嬉しいな。
息子は、外に出かけると『帰ろう帰ろう』って言うんです。 今は外の商業施設にも魅力を感じなくなったみたいで。親としてはお金がかからなくていい(笑) その分、暮らしの方にお金をかけている感じですね。
“家が、子供の感性を育ててくれている”とも感じます。
“家づくり”は、家が完成して終わりってわけじゃなくて、暮らしや、その日々で感じることも含んだもの。こういう家づくりを、多くの人に知ってもらいたいな。
遥叶くんはお父さんの仕事が好きで、建設中も何度も見に来ていたそう。何かをつくるのも、つくっているのを見るのも好き。
新しくこの地域に引っ越してきて、お友達は小学校からだけど、少しずつ家に遊びに来てもらえるようになって。この家は遊びどころがたくさんあるし、気に入ってもらえてるみたい。
いろんなおもちゃのアイデアを考えて紙に書いて、お父さんにつくってもらっている。「発注書がたまっているんです(笑)」と崇志さんは楽しげ。
住まいは、家族の感性にも大きく影響するし、それによって暮らし方も自然と変わっていく。当たり前かもしれないけど、“どんな空間で生きているか”って、すごく大切なんだな。
「これから」のこと
最後に、住まいと家族のこれからについても少し尋ねてみた。
崇志さん
寝室と息子のスペースがある2階(屋根裏)の間取りは、彼の成長とともに変化させていくと思う。でも、きっちり仕切ることはしないつもり。手を加えれば変えられて、家の変化を楽しめるのがいいですね。
ゆくゆくは、家の下に“はなれ”をつくって、“母屋”からベルで呼ばれるみたいにしたいな(笑) この家を、“壮大な遊び場”のようなものだと思っていて。
そして、そうやって遊びを創っていくのが、家族の中の喜びや楽しさになっていく。そんなことを考えています。
ひとみさん
「男の子を育てる不安はあるんです。でも、この家なら、うまく育つんじゃないかって思ってて。外につくるような“秘密基地”もいらなくなるような気がしてます(笑)
この家に住んで1年と少し。やっと落ち着いてきたから、自分も趣味を見つけたいと思ってます。自分自身のことももっと見つけられたらって。
両親がやってるお花を見てて、自分もいずれやりたいと思うし、ハーブも育てたい。“この家を活かしたなにか”をやっていきたいなって思ってます。
取材日:2019/4/6
取材を終えて
「住まいも人生の一部」なんだ
取材を終えるころ、気づけば3時間以上が経っていました。ご自宅を後にするときも、遥叶くんがいつまでも見送ってくれて。 あの家から離れるのがなんとも寂しく感じるような、不思議な感覚が胸にありました。
あらためて、「住まいも人生の一部」なのだと感じる時間でした。 住むほどに、年月を重ねるほどに、住まいも含んだ人生が色濃くなっていく。自然とも“自然に”つながりながら。
“シンケンの家と住まい手が紡いでいく時間”の豊かさを目に浮かべる、最初の出会いでした。
・場所:鹿児島県姶良市蒲生町
・敷地:572㎡(173坪) 1階:70㎡(21坪)2階:60㎡(18坪)
・完成:2017年11月
2013〜2015年10月 イメージに適う土地を探す。じっくりと時間をかけた
2015年11月〜 住まいのプランづくり、金額の確定から融資準備、着工
その後も暮らしにフィットする住まいに進化させ続ける
”私”が知った
シンケンの住まいづくりメモ
シンケンでは、家のことを“住まい”と呼んでいる
同じ家は2つとない
どの窓からも、木が見えるようになっている
「夏はすずしく、冬はあたたかい空気」を生むしくみ
(熱の性質:あたためられた空気は上昇する、熱は貯めることができ、また放射することでまわりを冷やすことができる)
それが家全体に行き渡るように、部屋を完全に仕切らない。仕切っていないから、風が通る。“おおらかな間取り”になっている。
夏の昼は、暑い空気を上昇気流も利用して排気。家全体に空気の流れが生まれ、すずしい。
夜は、“放射冷却”で冷やされた空気を室内に取り込む。
冬は、夏のようには排気せず、太陽があたためた空気を家の中に蓄える。家を下から支える土台、「基礎」に使われるコンクリートも熱を貯め(蓄熱という)、真冬でも屋内はあたたかい。夜も、“ゆるやかに”あたたかい。
「外がむわっと暑くても、玄関に入ると涼やかな空気。外がすっごく寒くても、玄関を開けたらあたたかい」はこうして生まれている。
人と自然、両方への配慮。垣間見える哲学
人、自然、そして家族のコミュニケーションにも配慮がされている。
そしてそのシステムはとてもシンプル。複雑なシステムは、どこかが故障したときに自分自身で直すことは難しい。「太陽がある限り使える仕組み」が住まいの中にあるようになっている。
これらの根底にあるのは、シンケンが住まいづくりで大切にしている「建築で暮らしをよりよくする」という哲学。
こちらのお住まいの
実例集
取材している"私"について
はじめまして。鹿児島県 霧島市の海の目の前、友人たちと改修した古民家に、妻と5歳の息子と暮らしています。フリーランスになって約10年、ライターなどいくつかのお仕事をさせてもらっています。
何度かアメリカのカリフォルニアを訪ね、自然との共生や進んだ文化に惹かれています。食材はできるだけ無添加・無農薬を選ぶ傾向があり、目の前の海に癒やされながら仕事に没頭しています。
知人の紹介で「シンケンの住まいづくりを言葉で表してほしい」という依頼をいただいたのがシンケンとの出会いです。家についてほとんど知らない自分でいいのだろうか? と思いながら、広報の森畑さんにいざなわれ、シンケンの家と、住まい手さんの夢に出会っていくことになりました。
このページを見てくださっているみなさまと一緒に、シンケンの住まいづくりを知っていきたいと思います。