外観

“創作する我が家”の8年
愛してやまない、ふだんの暮らし

“創作する我が家”の8年
愛してやまない、ふだんの暮らし

塀が続き、なかなか親しみが持てない住宅地の中、起伏のある開けた緑地と樹々。
胸に爽やかな家と出会いました。

“創作”する我が家

中島さんご夫妻はおふたりとも芸術愛好家で、中学校で美術を教える眞(まこと)さんと、小学校で図書室の司書をつとめる香織(かおり)さん。

訪ねると、眞さんが早速案内してくれる。
正面の外壁を「いい色ですね」と触れると、「この味が、いいんですよ」と、やっと出てきたという風合いが愛おしそう。
味わいを増してきた、木の外壁

眞さん
売地のときは、敷地を平らにするための擁壁でぐるりと囲まれていたんです。

取り壊した擁壁
ぐるりと囲んでいた擁壁は、土地になじむように削って
 手前側だけ残された

それをくずして、壁の上まであった土も削ってなだらかな庭に。
その奥に、家とつながるアトリエがある・・・
このプランを見たときは、もう、「ええー!」と鳥肌が立ちましたよ。

  • イメージパース
    眞さんが驚いたイメージパース
  • 外観
    暮らし始めて、3年目の夏
  • 外観
    木々が育ち、家と自然との一体感は深まっていく

“平らな土地をつくるための壁”を取り壊して 傾斜にしてしまうなんて、本当に大胆な発想で。
その場所を見事に生かす“土地の見方”に、今回もまた新鮮なおどろきがある。


眞さん
木の塀は最初はなくて、外との接点に緩急をつけたくて、シンケンをまねて自分でつくりました。
内側にベンチがあって、家を眺められるんですよ。どうぞ座ってください。

  • ゆるやかなスロープ
  • 手づくりのベンチ
シンケンの発想に応えるように、大切にこだわって楽しんでいるのが伝わってくる。

眞さん
とにかくいろんな所に“居場所”をつくるのが楽しくて。
先輩に「また?」と言われながら、つくっちゃいます(笑)

  • リビングから見た庭
    ウッドデッキのくつろぎスペースも自作
  • 家を眺める居場所
    家を愛でるビュースポットがいくつも
お話している間、美術大学でひとつ上だった香織さんを「先輩」と呼んでいるのがなんとも楽しくて。
「やっぱり今も先輩の方がセンスが上。配置の決定は先輩です」とおどける眞さん。
屋外スペース
ウッドデッキから

眞さん
朝はコーヒー、夕方はビールを片手に、家のまわりをぐるりとまわって、あちこち腰掛けて家を眺めて。
週末はあそこを整えよう、と考えたり。蚊に刺されても気にしないで過ごしちゃいますね。

ずっと楽しそうに語ってくれる眞さん。「この家が本当に好き!」が伝わってくる。


続いて、アトリエに。

眞さん
夫婦ともに美術を学んでいたので、“アトリエのある家”に住むのが ふたりの大きな夢だったんです。

夢のアトリエ

陶芸や、家づくりの作業をする場所で、定年退職の後は展示スペースや創作教室にするアイディアもあるそう。

眞さん
このボード、規格に合わせて自分でつくりました。
似ている道具がまっすぐ並んでいるだけなのは、ちょっとかっこわるいと思ってずらしたり、浮かんできた絵を描いたり。
こういうことをいっつも考えてますね(笑)

  • 楽しいボードで収納
    機能性と楽しさが詰まっている
  • 陶芸の道具
    陶芸の道具も美しい
  • 陶芸の作品
  • ガス窯
    外から見える煙突の位置にこだわって決まった、ガス窯の居場所
  • 工房の看板
    “ふたりの力を合わせた創作”
    そんな想いを込めた、愛する工房
アトリエ、見ているだけでわくわくするなぁ。

ひとつひとつに理由があり、見ていておもしろい。そこかしこにおふたりの工夫がある。
わくわくするアトリエ

なかなか進めない、楽しい探訪は本宅へ。

“小さな家”を、楽しく住みこなす

こちらの本宅は、実はシンケンの家の中でも最小クラス。敷地自体は広さがあるのだけど、先ほどのアトリエの大きさを十分にとるために、本宅の面積は小さくなった。
小さな家を住みこなす
けれど、入ってみると、“狭さ”は感じない。
シンケンの家の「外を取り込む大きな窓」が、空間を広く感じさせてるんだな。
すっかり、その感覚になじんできたぞ。

「小さな家を上手に住みこなすって、実はなかなか簡単ではないんです」とシンケン・広報の森畑さん。

なるほど、「暮らしで使う物」はあるから、物理的な広さとの兼ね合いはやっぱりある。
だから、たくさんの工夫がされてるんだ。

ぱっと目に入るのが、シンケンの家の特徴のひとつ、「50cm間隔で“小柱“がある壁・PLAY WALL」。
自在に、隅々まで活かされ、そして楽しんでいるのが伝わってくる。
  • 活かされるPLAY WALL
  • 新築時のPLAY WALL
    入居時
  • 夫婦で描いたスケッチ
    暮らしながら、夫婦で理想の形を描いていった
小柱の奥行きは“6cm”だそう。
それだけの空間で、こんなにいろんなことができるんだ。
  • みせる収納PLAY WALL
  • PLAY WALLと楽しいアイテム
  • PLAY WALL
  • PLAY WALLを活かす
便利に「収納できる」だけでなく、“ご夫婦らしさ”が伝わってくるディスプレイ。
書斎やキャビネットまである。
「アイディアが湧いて、試して、そしてまた・・・」という 楽しい実験をいくつもしている姿が浮かぶ。

眞さん
ここは全部、“絵の感覚”なんですよね。色をたくさん使って、油絵や水彩画のように重ねていく。色の判断は先輩です(笑)

一番最後につくったのは、テレビの下の白いタイル。真っ白でいいのか?って先輩と相談して、結局えんぴつでちょっとよごしてニュアンスをつけたり。

  • 夫婦でDIY
  • タイル貼り
  • タイル貼り
  • タイル貼り
  • タイル貼り 完成
「家の表現力」とでもいうような、そんな表現の仕方があったんだ!という発見の連続。

「小さい家だからよくない」ではなくて、ご夫婦にとっては「小さくて楽しい、想像力をかきたてる器」なんだな。

キッチンのタオル掛けや、コードを隠すためのカバーには、重厚感のあるガス管が。
キッチンのガス管

眞さん
全然、ガスは通ってないんですけど、柱の中を通って、壁から外に出て、みたいにいちおう見た目が成り立つようにしてて(笑)

ひとつひとつの動きや仕掛けが楽しい、「見て見て!」と紹介したくなる創作がまだまだたくさんある中島さん宅。

「ここは自分でつくって・・・」「元々ここまでだったのを自分で足して・・・」というお話を聞いていると、家ってこんなに自由なんだ!と思うし、自分も家のあの部分を加工してみたい、という気持ちがむくむくと。
  • キッチンわきの収納も、小柱スペースを活用
    キッチンわきの収納も、小柱スペースを活用
  • 開けた収納
    キッチンわきの収納も、小柱スペースを活用
  • DIYの和室
    和室も手づくり
  • 洗濯道具を隠す収納
    「こんなところに!」の洗濯道具も扉ですっきりと
  • 和室のPLAYWALL
    暮らしと共に創作が重ねられていく
そして、中島さんご夫妻がここまで自在にできているのは、“柱や梁といった構造材が全部おもてに出ている”つくり方だからこそ。
シンケンと、本当にいい出会いだったんだ。

“我が家という作品”づくりに参加する

眞さん
この家は“作品”だと思っています。シンケンがつくった作品を“所蔵”しているような。だから、家を眺めるときも、“自分ち”というより、作品を見てる感じで。
時間とともに移り変わる作品づくりに、私たちも参加してる感じですね。

おお、「所蔵」。確かにそんな感じがする。

そしてそこに“参加”している。
暮らしそのものが表現でもあって、だから、草刈りも含めて“大変なこと”ではなく、楽しみのひとつなんだ。
くつろぐリビング

眞さん
シンケンから“新しい見方”を教わったように思っていて、暮らしているとアイディアがどんどん湧くんです。
全部説明してたら日が暮れちゃうくらい、考えて考えて、つくってますね(笑)

そんな風にしてたらある日、先輩が庭で急に「やっぱりうちが最高だー!」って両手を挙げてて!

庭から見る外観

香織さん
言ったっけ(笑)
住んで8年になりますけど、まだやりたいこと出てきますね。終わりがない感じ。

“日常茶飯”という言葉が好きで、この空間を「日常茶飯所」と呼んでみてます。
特別じゃなくて、ふだんの場として。好きなものを置いて、かしこまってない場所。

日常茶飯所

眞さん
そうそう、それ。ふだんが一番で、だからやっぱりうちが最高なんだよね。

ウッドデッキ
ぜんぶの空間が、ご夫婦の合作
やぁ、なんて楽しい家と暮らしなんだろう。

“住まいの工夫”が、そこかしこにある中島さん宅。
それは「毎日どんな光景を目にするか」が、“暮らしの中で感じる豊かさ”に すごく深くつながっているからなんだろうな。

これまで伺ったお宅からも、その大切さを受け取ってきた。
家って、仕事をして帰ってきて ただ休むだけの場所じゃなくて、自分の好みや感性を表現して、楽しむ場所でもある。
それを全身で感じて、からだが喜ぶような時間だった。

眞さん、香織さん、ありがとうございました!
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取材を終えて

人生と住まいは“ひとつなぎ”

 

どこまでをシンケンがつくって、どこからがご夫妻の手によるものか、わからないくらい一体となった住まい。

「つくって暮らす」こと、「我が家に参加する」こと、なんて楽しいんだろう!とずっと感じていました。

もともとの創作の想いと技術があってこその仕上がりだとも思いますが、自分が願うような形に向け、家に手を入れていく楽しさが胸に残ります。

 

ただ便利にするのではなく、そこに自分の“好み”や“審美眼”をもって取り組むからこそ、より一層愛着が増していく。

中島さんご夫妻のことを知ろうと思ったら、この“作品”を語らずして、その全体は知り得ない。

ひとと住まいとは、こんなにも一体になるのだと実感します。

 

 

・場所:鹿児島県姶良市
・敷地:621㎡(188坪) 1階:36㎡(11坪)2階:36㎡(11坪)/ アトリエ44㎡(13坪)
・完成:2012年8月

”私”が知った
シンケンの住まいづくりメモ

“構造”を活かした収納と表現・「PLAY WALL」

シンケン独自のこの“壁”は、まず、「外壁材」「断熱材」「小柱」が一体になっていて、“防火壁”であり、家を支える“耐力壁”でもあって、家の構造としてすごく大事な壁。
ふつうはこの「小柱」の上から内装材を設置しますが、あえて“奥行き”を残して、住まい手が活かせる余白と“キャンバス”のようなものにするために生まれたのが「PLAY WALL」でした。

壁面の広がりは、“収納のための余裕”と、日常の景色に“自分色を差す”ために機能する、ふところ深い空間になります。
設置するための“棚板”はキットになっていて、22の種類があり、DIYをこれから始めたい人も手軽に試せるそう。
PLAY WALLを活かしてみるところから、「家を楽しむ」を始められそうですね。

※PLAY WALLー実用新案登録済み(第3160261号)、株式会社シンケンの登録商標です

“構造材が見えている”、安心と、工夫のしやすさ

柱や梁といった“構造材”が、クロスなどで隠れていないのがシンケンの家の特徴のひとつ。
“隠しごとがない”安心とともに、“木”の素材の特性を活かしていろんな加工ができる可能性があります。

よく伺うのは、「子どもの成長に合わせて空間の仕切りを変える」ことや、「趣味の道具を設置する」ことなど。
思い描いたように、また、必要に応じて柔軟に対応できるのは、構造材が見えている“とっつきやすさ”があるから。

見た目の美しさ・安心感とともに、暮らしのための工夫を可能にしてくれる、大切なポイントです。
writer

取材している"私"について

はじめまして。鹿児島県 霧島市の海の目の前、友人たちと改修した古民家に、妻と5歳の息子と暮らしています。フリーランスになって約10年、ライターなどいくつかのお仕事をさせてもらっています。

何度かアメリカのカリフォルニアを訪ね、自然との共生や進んだ文化に惹かれています。食材はできるだけ無添加・無農薬を選ぶ傾向があり、目の前の海に癒やされながら仕事に没頭しています。

知人の紹介で「シンケンの住まいづくりを言葉で表してほしい」という依頼をいただいたのがシンケンとの出会いです。家についてほとんど知らない自分でいいのだろうか? と思いながら、広報の森畑さんにいざなわれ、シンケンの家と、住まい手さんの夢に出会っていくことになりました。

このページを見てくださっているみなさまと一緒に、シンケンの住まいづくりを知っていきたいと思います。