Wazett style


インターからほど近く、細い道を進むと、小さな看板に「Wazett Style」の文字が目に入りました。気をつけないと、通り過ぎてしまいそう。
小さな看板
鹿児島の、知る人ぞ知る、一度知ったら人に話したくなる素敵なカフェ「ワゼット スタイル」。
実は、建物・空間をシンケンが手掛け、18年前に開かれたそうです。

目がよろこぶ空間


入り口から小道を車で進むと、ふうっと空間が開けて建物が見えてくる。
アプローチ
駐車場からもう「この空間、好きだなぁ」という感じ。
緑とせせらぎ
手入れがされていて、安心して車を降り、緑やせせらぎに目が喜ぶ。

自然と、人の手と


建物に向かうアプローチへ。デッキをくぐる小川をまたぐ瞬間が楽しい。
建物に向かうアプローチデッキ
自然と、人の手とが相まって、
心地よさと美しさ、そして安心が、この場所にはあるように感じる。
外観
なんとも、気持ちがいいなぁ。
トンボ

この土地との出会い


あらためて、建物の中へ。
店内のようす
今回お話を伺ったのは、お店の構想と準備、開店までを主に担われた奥さま・貴子さんと、
ワゼットがある“市来(いちき)”が地元で、オープンから5年後、念願のスタッフとして本格合流されたご主人・剛さん。
剛さん
ワゼットは、今でこそ、なんとも“完成度の高い”空間に見えるけれど、
元々は、なんと、ごくふつうの田んぼだった。
建築前の土地のようす
2001年、建築前のようす
2001年、建築前のようす
これまでも、「ここは藪だらけだったんです」「林を切り拓きました」というお話を聞いたけど、今回はなおのこと驚きが大きい。

剛さん
この土地との出会いは、私と父が「地元でゴルフの練習場をやりたい」と思っていたことからなんです。

今見れば“ここしかない”ように思えるけど、「練習場にできるくらい広い土地はここしかなかった」からこそ、この場所だったんだ。
この土地との出会い

シンケンとの空間づくり


その後、剛さんの鹿児島転勤を機に、具体的な検討が進んでいった。

貴子さん
カフェは「前から持っていた夢」というわけではなくて、生活のことも考えて、「この場所で自分ができること」を考えていたんです。
当時カフェブームだったのもあって、ケーキもコーヒーも好きだし、カフェがいいかもって。

カフェメニュー
そうして、“カフェもあるゴルフ練習場”をイメージして、地元の工務店に相談。
けれど、出てくるプランはどうもこの土地になじんでいない。

「やっぱりやめようか・・・」と迷った時期もあったそう。

そんなとき、県庁の展望レストランで食事をしていると、太陽にきらりと光り、斜めに建つ家が目にとまる。
与次郎ヶ浜モデルハウス
シンケンの与次郎ヶ浜モデルハウス
シンケンの与次郎ヶ浜モデルハウス

貴子さん
それがシンケンのモデルハウスで、その足で訪ねました。
雰囲気が、イメージにぴったりで・・・
私たちの土地じゃ無理って言われるかもしれないけど、でもやっぱりお願いしたい!ってなって、相談したんです。

そうして、“田んぼの土地”に、社長の迫さんとスタッフの方々がやってきた。

土地を見た彼らから出てきたのは、「ふつうの練習場のようではなく、芝の庭でゴルフを楽しめるような、新しいタイプの練習場にしましょうよ」という言葉。

他にも、湿地の排水が課題だと思っていたら、「ここに池をつくりましょう」と逆の発想。
ワゼットのせせらぎ

貴子さん
・・・なにを言っているかわからないくらい、意外性のある提案でした(笑)

さらに続く提案。

「入り口からずーっと入ってきて初めて全貌が見えるように、建物は敷地の中ほどに配置しましょう」
「池の上にはデッキをつくりましょう」
「ただ整地するのではなく、木を植え、自然の中にたたずむ家をつくりましょう」

まだ田んぼと山しかない空間を前に、現在の姿が思い描かれていたんだ。
“土地を見る”力、すごい。
池を取り入れた空間

貴子さん
彼らは、ふつうの練習場をつくるイメージは最初からなかったんだと思います(笑)
“発想がただごとじゃない”ことはわかったし、もう任せようと決めました。

そこから、シンケンの家づくり・空間づくりが始まった。
・・・が、「任せた」ものの、建物が赤く塗られ始めたのには驚いたそう。
自然の中に映える家

貴子さん
黒をイメージしていたので、うち、どうなるんだろうと・・・(笑)
でも、塗り終えると、緑の中に赤が映える。試し塗りした板を見ただけじゃわからなかった。
新しいものは、“見えてる”人に任せるのがいいんだなって思いました。

部分的な好みもあるけれど、「その土地と家とが引き立て合うような全体の調和」を見すえての選択がされているんだ。

貴子さん
工事が進む中、「こんな場所じゃ人が来ないよ」なんて反対の声をかけられたりしながら、それでも無我夢中で開店の準備をしていました。勉強しなきゃいけないことがたくさんあったから。

そんな中、大工さんが休憩時間に小川で川エビをとったり、自然の中での家づくりを楽しんでくれていて、嬉しくて。

もうすでに、この空間で、のびのびと気持ちのいい時間を過ごしてくれている人がいる。
「絶対、ここはいい場所になる」って思いました。

そうして、ここに、“Wazett Style”という空間が生まれたのだった。
2003年、オープン当初
2003年、オープン当初
2003年、オープン当初

この空間をかたちづくる


それから、もう18年。本当にあっという間だったそう。

貴子さん
“自然”を大切にしながら、どう“お店”としての空間をつくっていくか。ずっと模索してきました。

自然の中でのひととき
開店以来、「誰も来なかった」という日はないそうだ。

貴子さん
昨日お客様があったから今日もある、とは限らないお仕事です。
こんな場所で、通りすがりの来店がないことを思うと、毎日、どなたかはワゼットのことを思い出して来店くださっているということ。
きっと、来れずとも、頭に浮かべてくださった方はもっといるはず。ありがたく、嬉しいことです。

地域の中でも、県外からのお客さんなど、大切な人をおもてなしする場所として特別な存在になっているそう。
自然の中でのひととき
お会計をすませてから「散歩してきてもいい?」としばらく歩かれたあと、「のどが渇いちゃって!」ともう一度来店されるお客様など、ワゼットならではのエピソードもたくさん。

自然の変化に合わせて、お店が変わる


ワゼットには、エアコンがない。
自然を眺めるカウンター席

貴子さん
最初の年に設置しないでいたら、全開の窓を抜ける風が涼しくて。
窓を閉めてエアコンをかけたら、この風の気持ちよさは感じられないですよね。
どっちが本当に心地よいだろうと思って、それ以来、エアコンのスペースは空のままです。

夏で汗ばむこともあるし、窓を開けているから虫が入ってくることもある。
それでも、“それが自然なんだ”というところに立ち続け、そのスタイルを大切にしてくださるお客様に長く愛されて、今のワゼットがある。
窓を開けて過ごす

貴子さん
この空間は、人の手や人工物だけではつくれないですよね。
そして、暑さ・寒さ、雨や風。うまく付き合えることもあるし、そうできないこともある。
いろんな意味で、“自然にはかなわない”んです。

貴子さん
梅雨の期間は風が通らず過ごしづらいから、開店2年目から「梅雨休み」をとってきた。
「エアコンを入れよう」ではなく、「店をお休みにしよう」という選択。

良い側面、大変な側面の両方で、「自然にはかなわない」。
そのように自然をとらえ、共に生きているんだ。

そんなワゼットだから、自然の変化が色濃く感じられる。
自然の変化に応じる

剛さん
暑くなる時期がずれ、冬が暖かくなって薪ストーブの出番が減っています。
台風は進路が変わって直撃しなくなったけど、大雨は雨量が増えて、敷地に被害も出るようになりました。

“自然の変化に合わせて、お店が変わること”が必要なんです。

自然からの影響をコントロールしようとするのではなく、自然の方に合わせる。
しびれるなぁ。
かに

自然に手を入れ、空間を育む


この空間の影の立役者が、ご主人のお父さん・健一さん。
健一さん
この土地と出会うきっかけをつくった人であり、庭の手入れをずっと担ってくれている。

健一さん
ここは10時になると海風が吹きます。
20年近く経って木々が大きくなり、夏の日かげが広くなりました。
夕方にはあちらの山に日が沈み、向かいの山が朱く照らされますよ。

ここをずっと見てきた健一さんの語る情景は美しい。
手入れの時間を重ねる中で、周囲の空間の変化をたくさん感じているんだ。

健一さん
ここにいらっしゃる方々に見ていただけるから、楽しんでがんばれます。
本当に、練習場にしなくてよかったですね(笑)

この空間のなんともいえない素敵さは、“自然”をベースに、思いのある人の手が入り続けているからこそ、生まれているんだな。
アジサイとワゼット

貴子さん
「いい場所を見つけましたね!」と言っていただくことがありますが・・・
いい場所に「なった」んだなって思います。

自然のなすがままでなく、人が管理しすぎるでもなく。
「自然と共に、空間を育てていく」姿を見るようだった。


取材日:2020/7/2

取材を終えて

ご夫妻から「自然に合わせながら、自分たちの想いを大切にし続ける」ことと、それが空間として形になることを見せていただいたように感じます。

 

そして、「私たちも、シンケンからたくさんのことを学ばせてもらっています。“ぶれちゃだめなんだ”って、気づかされますよね」と語る姿に、
関わらせてもらっているシンケンの社員さんたちの姿が重なりました。

 

お二人が年齢を重ねられていくことも含めた“自然の変化”に合わせ、変わり続けるワゼットに、また訪れたいと思います。

071a7733kai

・場所:いちき串木野市大里4278
・敷地:7,883㎡(2,385坪) 1階:80㎡(24坪)2階:41㎡(12坪)
・完成:2003年

”私”が知った
シンケンの住まいづくりメモ

「建物 と 庭」「うち と そと」のつながり・一体感

ワゼットの空間を見たとき、そしてその中に身を置いたとき、その“全体の一体感”になんともいえない心地よさを感じます。

それは、シンケンの「住まいと庭は一体のもの」という考え方が生み出しているようです。家は、家だけで成り立っているのではなく、そこにある樹木の種類や配置によって、その印象や美しさを大きく変える。

それは、外観はもちろん、中からの景色にも言えること。シンケンの家は、「面積では小さいはずだけど、中ではそれを全く感じない広さ」の家がたくさんあります。

それは、大きな窓で「外を取り込み」、開放感が空間を大きく感じさせるから、できているんですね。大きな家では手入れが“労働”に感じられることもあるけれど、小さな家なら手入れは“楽しみ”になる。

手入れが“楽しみのひとつ”だから、住まいを“愛でる”ように大切にできる。「内と外のつながり・一体感」を上手に扱えるシンケンだからこそ、“小さな家を愛でるような暮らし”をしつらえることができるのだと、あらためて感じました。

こちらのお住まいの

実例集
writer

取材している"私"について

はじめまして。鹿児島県 霧島市の海の目の前、友人たちと改修した古民家に、妻と4歳の息子と暮らしています。フリーランスになって約10年、ライターなどいくつかのお仕事をさせてもらっています。

何度かアメリカのカリフォルニアを訪ね、自然との共生や進んだ文化に惹かれています。食材はできるだけ無添加・無農薬を選ぶ傾向があり、目の前の海に癒やされながら仕事に没頭しています(笑)

知人の紹介で「シンケンの住まいづくりを言葉で表してほしい」という依頼をいただいたのがシンケンとの出会いです。家についてほとんど知らない自分でいいのだろうか? と思いながら、広報の森畑さんにいざなわれ、シンケンの家と、住まい手さんの夢に出会っていくことになりました。

このページを見てくださっているみなさまと一緒に、シンケンの住まいづくりを知っていきたいと思います。