Scroll
窓辺の木の枠に、小さな凹みがふたつ並んでいます。これは、この家の末っ子の女の子が、幼いときにつけた歯形。窓枠の高さは、ちょうど赤ちゃんに歯が生え始める頃の身長と同じくらいです。歯固めにちょうど良いものが目の前にあったので、ということでしょう。この家族は、窓枠の凹みを愛おしいわが子の記憶として大切にしています。
家族の記憶が刻まれていく家は、変化を受け入れる力がある、変化が味わいになる素材でつくるといいと思います。そして、家の持つ雰囲気が、カチッと整いすぎたものよりも、家族のふだんの生活を受け入れるようないい塩梅の大らかさがあると、少しの傷やシミに大騒ぎすることなく、気を楽に暮らせるのではないでしょうか。
子どもがつけた柱の傷や壁のラクガキも、お父さんが日曜大工のときにあけたクギの穴も、お母さんが色を塗り替えた窓枠も、一つひとつがかけがえのない大切な思い出。家族の歴史とともに深まっていく家に暮らしましょう。